権力から自由(フリー)でいること。当然の自由のために,使われる,PGP。
暗号ソフト「PGP(プリティー・グッド・プライバシー)」の開発者であるフィル・ジマーマンのインタビューから。「今なら,PGPを人権を守る運動家に使って欲しくて開発したと主張できる」。「都会では常に鍵をかけなければいけないように,ネットで自分の身を守るために暗号化した電子メールやファイアウォールが必要だ」。「影響を受けた人物をあげるとしたらダニエル・エルスバーグだ」。
もともと,プライバシー的な要素の薄いインターネットは,スニッフィングツールを使えば,イーサネットを流れる情報をすべて取り出せる(winならVigil,OS X,FreeBSDならettercap)。彼のみているウェブサイトのアドレスも,彼女のメールの文章も,社長のクレジットカード番号も簡単に手に入る。と云っても,それは別になにか悪いわけぢゃない。もともと,そういうものなのだ。だから,必要なら自分で暗号化を施すのは当然。人のモラルを期待するよりは保身に労力を使う方が賢い。
ダニエル・エルスバーグの名前が出ているのは,PGPの意図に,政治的な匂いを付ける。エルスバーグは,国防省の官僚としてベトナム戦争の侵攻計画を練っていたが,職を辞し,戦争の極秘文書(ペンタゴン・ペーパー)をマスコミに公開した。エルスバーグは起訴されたが,検察側の情報内容が盗聴によるものであることがばれ,起訴は却下された。PGP開発への流れとして考えると,興味深い。もう,必要がない国という権力,企業という権力,旧時代の常識という権力を,ゴミ箱に捨てるために,PGPは使われる,使える。
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